平成30年予備試験口述試験刑事再現答案
登場人物は、
主査:30代女性
副査:40代男性
弁護士なりたいお君(私)
主査:では、事案を読み上げますので、よく聞いていてください。
Aが、現在外出中の一人暮らしBの住居のドア付近にガソリンをかけて焼損させました。
事案はよろしいですか?
はい。
主査:では、Aに何の罪が成立しますか?
現住建造物放火罪が成立します。(あっ、副査の人大きく頷いてるこういう身動きによる誘導は再現集で読んだやつや!)
主査:はい。では、どの時点で実行の着手が認められますか?
ガソリンをかけた時点です。
主査:それはなぜでしょうか。
えーと、ガソリンは引火しやすいので、まいただけで焼損を惹起する現実的危険性があるからです。
主査:そうですね(微笑)。では、次の事案に移ります。
ドア付近にかけたのは灯油であり、Aが火をつけなかった場合はどうですか?
その場合は、えー……と、まだ実行の着手はないので、何の罪も成立しないと思います。
主査:どうしてそう考えましたか?
灯油の場合は、ガソリンほど簡単に燃えるものではないので、ドアにかけただけではまだ結果発生の現実的危険性はないと考えたからです。
主査:わかりました。何の罪も成立しませんか?
あっ!!放火予備罪は成立します。(優しい誘導や)
主査:そうですね(微笑)。では次にいきますね。
Aは、所有者Bから同意を得て、B以外が住んでいない家に放火しました。この場合は何罪が成立しますか?
公共の危険が発生していれば、自己所有非現住建造物放火罪が成立します。
主査:どうして自己所有となるのですか?。
えーと、109条2項は、自己所有であれば物の処分ができるから軽く罰せられると考えられるところ、所有者の承諾を得ているのであれば自己の物と同視できるといえるからです。
主査:はい、わかりました。
それでは、次に中止未遂について聞いていきますね。
Aは、新聞紙に火をつけて放火しようとしていたところ、これを見つけた者が携帯電話で通報するようなそぶりで近づいてきました。
まず、この場合に、「自己の意思により」について、あなたはどのような基準から見て判断しますか?
えーと、その事情によって、一般人が通常犯行をやめるか…という基準です。(???)
主査:一般人……?どういうことでしょうか。どういう判断資料を使うんですか?
えーと、普通の犯罪者なら、その事情で犯行を中止するかどうか……という…。
主査:犯罪者!?
あっ、間違えました一般人です。えっと、一般的に犯行の障害となりうるかという基準です。(あっ!やばい訂正しよう。副査の人もなんとなく納得してない感じだな。誘導ありがたいけどわかんないな。)
主査:はい、わかりました。では、その基準を本件に当てはめてください。
えっと、通報者が向かってくるという事情は、通常の犯人なら、犯行を中止して逃げるような事情です。そうであれば、犯行を中止しても、自己の意思により、とはいえません。
主査:(困った顔)うーん、では、先ほどの事案で、Aが目撃者に放火を見せつけたいから犯行を止めていた場合はどうですか?
えっと、あの…その場合は…私の基準だと…。わざわざやめてるので……。すみません混乱してしまって。
(1、2分ほど、あれやこれやとあてはめを行うが、主査は粘り強く待ってくださる。副査はのけぞって、明らかに違うという様子を示してくださっている。)(あれ……事案なんだっけ?飛んじゃった……。)
主査:大丈夫です、落ち着いてくださいね。
次に、おっしゃった立場ではなく、犯人の立場に立つ基準だとどうなりますか?
(その後、主査の懇切丁寧な誘導で、なんとか答えにたどりついたようだが、自分で何を言ったかは思い出せない。これに加えて、別の立場(犯人の主観)によるあてはめも求められたが、これもグダグダ。)
主査:はい、わかりました(ニッコリ)。中止未遂については、あとでよく勉強しておいてください。
はい、申し訳ございません。(こんなに優しく指導してくださっているのに、不甲斐ない(涙)。)
主査:じゃあ次にいきますね。
13歳の証人Cに対し、証人尋問をする場合、Cが一人で不安というときに何かできないでしょうか。
えーと、保護者の付添いができます。
主査:はい、では、次に、被告人の妻Dに証人尋問をする場合に、Dが不安というときに何かできないでしょうか。(このあたりの質問はもっとちゃんとした聞き方だったが失念)
遮蔽措置があります。
主査:ほかにはありますか?
ビデオリンクもできると思います。
主査:はい、では遮蔽について伺っていきます。
被告人との間の遮蔽措置と、傍聴席との間の遮蔽措置、いずれの要件の方が厳格ですか?
えーと、傍聴席ですかね。(そんなのあるんだ…まあこれはみんな知らないだろうから適当に行くか。)
主査:それはなぜでしょうか。
あれっ、でも、被告人のような気もする……どっちだろう……。
やっぱり、被告人で……す。(あれ、二人とも微妙な感じだな、逆にしとこう。)
主査:うん、それはどうしてですか?
えーと……それは……それは……。(どっちにせよわからん)
主査:うん、被告人側はどういう理由で要件が厳しいのかな?
あっ!……被告人は反対尋問ができるので、証人の様子を見て、尋問を考えていく必要があるため、要件が厳格なんだと思います。
主査:そうですね。このあたりはよく復習しておいてくださいね。
(副査に対し)ありますか?
(副査黙礼)
では、以上となります。
ありがとうございました。(オワタ)
コメント
一日目終了後は、気が気じゃなくほぼ勉強できませんので注意してください。
二日目は出来はともかく、緊張もなく楽しんで受けることができました。終わった後はすさまじい達成感があります。これは司法試験では味わえませんでした(笑)
一日目二日目ともに、試験会場近くに伊藤塾が自習場所を設けてくれているので、早めに新浦安に行ってそこで勉強するとよいでしょう。
受かっていたから言えることですが、試験がおわってみると、口述試験は論文試験の合格者に対するご褒美的側面もあるなあと思いました。相当の行政リソースを割いて、プロが2対1で指導してくれる場でもあるので、とても勉強になりました。条文を大切にする姿勢など、翌年の本試験にもこの経験が生きたと思います。
1.対策
民事同様、前半に聞かれる実体法に勉強時間のほとんどをつぎ込みました。これらができていれば、その後の問題で少しくらい間違えていても善解してくれ、59にはならないだろうと踏んだからです。
残念ながら本番では中止未遂で大きく失敗しましたが、ここは他の受験生もなかなか厳しかったようで助かりました。
2.試験委員
二日目は完全に当たりでした。きわめて丁寧に誘導していただきましたが、うまく受け答えができない部分もあり情けない思いをしました。