令和元年司法試験行政法再現答案

設問1

1.両処分の関係

本件事業認定(法16条、17条2項、20条)についても、本件権利取得裁決(法47条の2)についても処分性が認められるところ、取消訴訟の排他的管轄及び行政事件訴訟法(以下略)14条1項が出訴期間を定めて法的安定性を確保している趣旨から、本件取消訴訟において、本件事業認定の違法性を主張することはできないのが原則である。

2.違法性の承継

(1)もっとも、原告に出訴する手続保障がなかったような場合には、訴権を保護する必要もある。そこで、先行処分と後行処分が相結合して同一目的効果を目指すものであって、先行処分の取消訴訟を行う手続保障に欠けていたという場合には、例外的に、先行処分の違法性が後行処分に承継されると解する。

(2)同一目的効果について

本件では、先行処分は本件事業認定、後行処分は本件権利取得裁決であるところ、先行処分は、収用を行うために必要な手続きであり(法39条1項、26条1項、26条4項、20条)、両者は、収用による公共利益の増進と私財との調整をはかるという同一目的効果を相結合して達成するものといえる。

(3)手続保障について

また、手続保障については、B県の反論として、事業認定及び告示は平成28年8月1日になされており、出訴する期間は十分にとられていたとの主張が考えられる。

しかし、本件では特殊事情がある。すなわちC市は、本件道路用地について、すぐに収用裁決の申請(法39条1項)を行わず任意買収を行う方針であり所有者との交渉を続けており、最終的には方針を転換し収用(法47条の2、102条)を行うこととしているが、この方針の転換があったのは平成29年7月12日と、すでに本件事業認定の取消訴訟の出訴期間を経過している時点である。所有者としては、まずは任意買収の交渉にできるだけ応じようとするのが通常であり、本件事業認定から6か月以内に取消訴訟で争う手続保障があったとはいえない。

(4)したがって、先行処分と後行処分は相結合して同一目的効果を目指すものであり、かつ手続保障にも欠けていたといえ、本件事業認定の違法性を、本件取消訴訟で主張することができる。

設問2小問1

1.無効確認訴訟(36条)

「目的を達することができないもの」(36条)とは、公法上の当事者訴訟(4条後段)や争点訴訟よりも、無効確認訴訟の方が直截に訴訟を解決できることをいう。

2.C市に対して提起できる訴訟

本件では、本件権利取得裁決が無効である場合には、公法上の当事者訴訟として、土地を権利取得されない地位確認訴訟を提起することができる。したがって、B県からは、無効確認訴訟に対する補充性があり、「目的を達成することができない」とはいえないとの反論が考えられる。

3.無効確認訴訟提起の可否

もっとも、事業認定が違法無効の場合、収用裁決申請(法39条1項)が事業認定告示(法26条4項)から1年以内にされない場合には、当該認定は失効する(29条1項)こととされている。

本件では、認定及び告示は平成28年8月1日にされており、現在は令和元年5月14日であることから、本件権利取得裁決の申請要件を満たしていないのは明らかであり、現在の地位確認をするよりも端的に本件権利取得裁決の無効確認をするほうが、直截かつ抜本的に訴訟を解決することができる。

したがって、無効確認訴訟は「目的を達することができないもの」にあたり、訴訟要件をみたす。

設問2小問(2)

1.裁量の有無広狭

(1)まずは、Aとしては、法20条3号非該当の前提として、同号には都道府県知事の要件裁量が認められないとの主張をすることが考えられ、これに対してB県より、広範な裁量が認められるとの反論があり得るため、裁量の有無広狭を検討する。

(2)裁量の有無広狭は、規定の文言及び処分の性質により判断するところ、同号は、「適正かつ合理的な利用に寄与する」という抽象的な規定となっている。また、事業認定処分は、その後に続く収容とセットであり、公共利益の増進と私財保護の調整を図りながら街づくりをすすめる都道府県知事の政策的専門的判断を要する事項といえる。

(3)したがって、20条3号該当性判断には知事の広範な要件裁量が認められるといえる。

2.裁量の逸脱乱用

(1)そこでAとしては、法20条3号非該当であるところ、B県知事に裁量逸脱の違法があるとの主張をする。裁量処分は、逸脱濫用の場合にのみ違法となる(30条)。そこで、重大な事実の基礎を欠くか、判断過程に誤りがある結果、社会通念上著しく不合理な判断結果となった場合に、裁量の逸脱濫用として違法となる。

(2)道路ネットワーク形成について

本件裁量行使の理由の一点目として、幹線道路へのアクセスのための道路ネットワーク形成がある。

しかし、平成元年調査では1万台であった交通量が平成22年調査では3500台まで減少しているところ、人口は1割しか減っていないため、C市の判断手法に誤りがある可能性があり、事実誤認といえる。また、もはや交通量が減っているのであれば、道路ネットワーク形成の必要性はそれほど高くなく、過度に考慮すべきでない反面、これによる良好な住環境破壊はより考慮すべきであるが、考慮されていない。

したがって、この理由については、事実誤認ないし考慮不尽による著しく不合理な判断といえ、裁量の逸脱濫用にあたる。

(3)通行者の安全確保について

また、理由の二点目は、通行者の安全や騒音からの保護にあるが、本件土地には学術上貴重ではないものの様々な水生生物が生息しており、この自然環境は一度失われると戻らない不可逆性を有するため、自然環境保護と騒音の影響の調和がとれるルートの採用について検討されるべきところ、なされていない。

したがって、これについても考慮不尽の違法がある。

(4)地域の防災性の向上について

三点目の理由として、地域の防災性の向上があり、他方で、本件土地の掘削は2メートルにとどまるので地下水に影響がないと判断されている。

しかし、過去の工事では2メートル程度の掘削でも井戸がかれており、影響がないかについての調査が欠けている。また、災害時用の水源とする井戸が枯れた場合には、逆に防災性は低下することとなり、目的に反するうえ、これについても調査・考慮されるべきところ、されていない。

したがって、これについても考慮不尽の違法があるといえる。

(5)以上、いずれの理由についても事実の基礎を欠くか、判断過程に誤りがあり判断結果が著しく不合理であるため、裁量の逸脱濫用として、違法である。

以上

 

コメント

司法試験受験翌週中に作成したため、再現度は80%以上です。

  • 無効確認なんて絶対出ないと思ってたので規範以外全く分からず……0点では?
  • 設問2(1)で考えすぎてしまい設問2(2)時間足りず雑すぎ
  • 公法系は厳しい評価になりそう
  • 誤字脱字等ご容赦ください