平成30年予備試験実務基礎刑事再現答案
第1、設問1
1.判断要素
89号4号該当性を判断するにあたっては、犯罪の性質、証拠の性質及び犯人と証拠の近接性を中心に判断する。
2.思考過程
(1)本件は、窃盗及び器物損壊という重大犯罪であり、Aはか0ナビを売ったのは自分だが、それはBから売却を頼まれたと述べ、その犯人性が争点となっている。
(2)そして、客観的な証拠をみると、Aと身分確認をした男が犯行翌日にV所有のカーナビを売却したことが認定できるが、これだけでは、本件カーナビを窃取したのがAだということは認定できない。そこで、W2供述録取書(甲8号証)が重要となる。
(3)すなわち、W2は、犯行日深夜の4月2日午前4時に、被害車から約5メートルという近さ、かつ、社内ランプが点灯しているという犯人の顔がはっきり見える状況で、犯人と思われる男と1秒もの間目があっている。そして、犯人が車で逃亡する際も、再度顔をしっかりと見ている。その後、検事から30人もの多数の者の写真で面通しをしたところ、W2は12番の男、すなわちAが犯人と同一であると述べており、その信用性は高い。これにより、供述録取書は、犯行当時現場にいた犯人はAという推認が強く働き、犯人性立証について極めて高い証拠価値を有する。
(4)W2は、被害現場の駐車場のすぐ隣に住んでおり、Aが保釈されれば、W2を威迫するなどする可能性もあり、証拠と犯人は近接している。また、供述証拠が変遷すると信用性が低下するおそれがある。
(5)したがって、89条4号該当性が認められる。
第2、設問2
1.①について
(1)類型
316条の15第1項第3号に該当する。
(2)重要性
上記の通り、犯人性の認定にあたっては、W2の供述の信用性が重要な争点となる。そこで、当時W2は本当に犯人を現認できる位置関係であったのかや、午前4時であることから、本当に当時顔がはっきり見れる明るさだったのかなどを確認することが、証明力を判断するのに重要である。
2.②について
(1)類型
316条の15第1項第6号に該当する。
(2)重要性
W2は、検察官への供述の前に、警察官にも状況を供述していると考えられる。そうであれば、より犯行との時間的近接性がある警察官調書の方が記憶が新しい。これとの供述に変遷があるのであれば、W2の供述の信用性がゆらぐため、その証明力を判断するのに重要である。
3.③について
(1)類型
316条の15第1項第6号に該当する。
(2)重要性
当時犯行現場に別の者がいて、W2と異なる供述をしている場合には、W2供述の信用性がゆらぐため、その証明力を判断するのに重要である。
第3、設問3
検察官は、312条に基づき、訴因変更手続を行い、共同正犯の訴因に変更する。
第4、設問4
1.(1)について
(1)結論
間接証拠に当たる。
(2)理由
直接証拠とは、それにより直接最終的な立証命題を証明できる証拠をいう。間接証拠とは、上記立証命題を推認させる間接事実を立証する証拠をいう。
W2供述は、当時現場にいた犯人と思われる男と、写真の12番の男であるAが同一人物であるというものであり、これにより、当時現場にいた男がAであるという事実が直接立証できるため、犯人性に関しては直接証拠といえる。
他方、W2は、犯人が実際に器物損壊及び窃盗に及んでいることは現認していないのであり、Aが犯行現場にいたということを立証してその犯行を推認させるにとどまるため、間接証拠にあたる。
2.(2)について
W2の供述によりAの犯罪事実を立証しようとする場合、W2供述録取書は、公判廷外供述で、かつ、その内容の真実性が問題となる伝聞証拠(320条)にあたる。そして、伝聞例外をみたさないと考えられる。法廷で証人尋問すれば証拠として扱うことができるため、裁判官は釈明を求めたものと考えられる。
3.(3)について
事件が午前4時であり、他に目撃者がいないと思われる状況では、Aが犯罪事実を行ったという事実の立証のため、W2に法廷で直接供述させる必要性が極めて高い。
第5、設問5
1.刑事訴訟法上の問題
316条の32により、公判前整理手続き終了後の証拠調べは原則禁止されるという問題がある。
そこで、弁護人は、領収書の写しを手に入れたのが手続後であったことを疎明する(規則217条の32)。
2.弁護士倫理上の問題点
領収書は、8月28日にVが受領しており、本来であればより早く、取り調べ請求すべきであった(職務基本規定35条)。
以上
コメント
評価はEです。不出来シリーズです。
もう内容はよくわからないくらいひどいので、これくらいやってしまうとEというしかコメントはないのですが、逆にこれでもFではありません。
ところで、3時間半の試験でトイレはどうすべきだったのでしょうか…。私は普段2時間までしかトイレは我慢できませんので、実務科目と本試験の選択科目は地獄でした。