平成30年予備試験会社法再現答案

第1、設問1

1.株主提案権(303条1項)及び議題通知請求権(305条1項)は、行使要件が規定されている。Dは6か月以上前から甲社株1万株を有しており、甲社は100単元をもって1単元とする定款の定めがあるため、100個の議決権を有し、持株比率は1%であるところ、303条2項及び305条1項かっこ書きは、100分の1の持株要件を定めており、基準日(3月31日)時点ではDはこれをみたしている。一方で、基準日後に甲社は20万株の新株発行をしており、Dは株主総会前に持株要件を欠いている。なお、124条は適用されない。株主提案権は「議決権」そのものではないからである。

そこで、持株要件はいつまで充足している必要があるか問題となる。

2.株主提案権は、株主の議決権を前提とするため、持株要件は権利行使時だけではなく、株主総会終結時まで保有していなければならないと解する。もっとも、常にそのように解すると、提案権行使妨害のおそれがあるため、会社が権利行使妨害目的で株式を発行し持株要件を欠いたような場合は、基準時に持株要件を満たしていれば足りる。

3.本件では、株主総会時点では、丙社に新株発行がされたことでDは株主提案権の要件を満たしていない。そして、発行も積極的な事業拡大が目的であり、Dの提案権行使を妨害する目的であったとはいえない。

4.したがって、Dは、「100分の1以上の議決権」を有するとはいえず、甲社が株主総会招集通知に議題及び議案の容量を記載しなかったことは妥当である。

第2、設問2

1.Bの423条1項に基づく損害賠償請求権が問題となる。

2.Bは取締役であり「役員等」にあたる。

3.「任務を怠った」かについては、直接取引(356条1項2号)該当性が問題となる。

(1)3号との対比から、2号の「自己又は第三者のため」とは、名義によって判断する。

本件では、Bは、丁社の全持分を有しており、事実上の主宰者として、「自己」のために取引をしたといえる。

(2)そして、本件賃貸借契約における賃料は、周辺の相場の2倍であり、1年分の賃料300万円と150万円の差額合計1800万円という「損害」が生じており、任務懈怠が推定される(423条3項1号)。そして、甲社は監査当委員会設置会社であるが、監査等委員会の承認も受けていない(同4項)。

4.本件取引はBが自己のためにしたものであり、無過失責任となる(428条1項本文)。Bは責任限定契約を締結しているが(427条)、428条2項により適用されない。

5.以上、Bは甲社に対して1800万円の支払義務を負う。

以上

 

コメント

 

評価はBでした。

ナンバリングがへたくそなこと、設問1は筋を違えていること、設問2で悪意重過失の認定が嫌だったので競業取引の「事実上の主宰者」に寄せて直接取引に持っていったことが悪かったように思うのですがBでとどまったので、よく言われるように受験生は会社法の勉強が遅れがちなのかもしれませんね。